セッション(1日目) ①「つまらん」といったある男性(住民)との保健活動奮闘記!
テーマ |
「つまらん」といったある男性(住民)との保健活動奮闘記! |
コーディネーター |
若林功貴(身体教育医学研究所うんなん) |
サブコーディネーター |
野村悠(聖マリアンナ医科大学) |
内容 |
「つまらん」――― |
レポート | 皆さんは住民とうまくやりとりが出来ず、思うように保健活動が進まなかった経験はありますか?このセッションは、うまくいくことばかりではない現場のリアルを参加者と分かち合い、明日からの活力を持って帰っていただきたいという想いから企画されました。 ‐‐‐若林担当セッション‐‐‐ 中山間地域の島根県雲南市で、腰痛・ひざ痛予防のために身体を動かす住民を地域全体で増やそうと取り組んできた『運動キャンペーン』の事例を紹介しました。地域に幅広くアプローチすることから、ソーシャル・マーケティングの理論等を活かし、いかに確実に運動を普及していくか戦略を整理し、試行錯誤しながら展開しています。 その中で私は、地域(人口360人、高齢化率42%)の多くの住民が動くであろう歩行普及の企画を思いつき、地域づくりのキーパーソン(インフルエンサー)である住民の方に提案しましたが「つまらん!」と言われてしまいました。しかし、住民に影響力のあるこの方が動けばターゲットである住民の方に情報が行きわたると確信し、くじけずに何度も本人と対話し続けた結果、地域のつながりを活かした歩行促進につながるイベントを開催することが出来ました。そして、このイベントでは全住民の5割以上の参加を促すことが出来ました。この経験から、地域のキーパーソンとともに活動すると、その地域に合わせた具体策が見え、より多くの住民が動くことがわかりました。 ‐‐‐野村コメント‐‐‐ 雲南市の事例から出てきたキーワードは3つあると考えられます。 1.インフルエンサーの存在、2.対話の継続、3.その地域に合わせること、です。 地域のキーパーソンを見つけ、彼らと地道に繰り返し対話してきたことから事業成功への道が開けた事例でした。一人のインフルエンサーとの関係づくりに多大な労力を注ぎ、地域全体へのアプローチとして効率が悪いように見えます。しかし、事業の成果から、つながりや信頼関係を重んじる地域で住民と一緒に取り組むために必要なプロセスに力を注いでいたことがわかります。 ‐‐‐下田担当セッション‐‐‐ 主に都市部の人々に「がん検診」を受けていただくための広報活動について行政のお手伝いをさせていただいた事例をご紹介しました。具体的には、「ソーシャルマーケティング」の手法を用いて、未だがん検診未受診である方を特徴的なグループ(例:20代女性)に分け、インタビュー調査を行って、当該のターゲットに「響く」メッセージを入れ込んだ啓発パンフレットを個別通知しました。最初(特にインタビュー調査のとき)は失敗ばかりでうまく対象者の意識を引き出せませんでしたが、奮起して対象者の意識を明確に抽出できるまでインタビュー調査を何度も繰り返し、デザイナーとも密にやり取りをしながらメッセージ性に優れたパンフレットの制作に成功しました。そして、最終的には受診率を大きく向上させることができました。セッションでは僕が経験したことを参加者の方々に疑似体験していただきつつ、ソーシャルマーケティングの手法を用いた広報戦略の立て方・実行の仕方についてお互いに理解を深めていく形をとりました。 ‐‐‐野村コメント‐‐‐ ソーシャルマーケティングという言葉になじみのある人は少ないと思います。このアプローチを用いることでこれまでよりも効率的な事業展開ができる可能性があるため、その考え方を知っておく必要があります。 ただし、絶対的な考えではなく、あくまで一つの手段ですので、皆さんの引き出しの一つとしておくべきものです。 ~~最後に~~ 田舎と都市部での対照的な取り組みに見えますが、事業を進める上で重要だと思う人(インフルエンサー、ターゲット)とお互いに理解し合うために、失敗にくじけず繰り返しアプローチしているところが共通していました。 セッションでは、参加者の皆さんが積極的にグループワークに参加なさっており、進行させていただいた3人も皆さんの話を聞く中で色々と気づきがありました。とても有益な時間だったと感じております。参加者の皆様、学会運営に関わる皆様に対して、感謝申し上げます。(文責:若林) |